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2010/01/30 (Sat) 新参者

東野圭吾『新参者』講談社、2009.9 読了。


うーん、唸る。作者の企みに自由自在に操られる読者であることを自覚する。「このミステリーがすごい!」第1位、「本格ミステリベスト10」第5位。その高い評判に違わない出来である。

主人公は刑事・加賀恭一郎。デビュー作『放課後』の鮮烈な読後とは異なり、『卒業』では大学の交友関係でやや技巧的な殺人事件がおこる。その時に初登場したのが大学生の加賀であった。その時はシリーズ物になるはずもなかったが、やがて刑事として復活し、以後、たびたび登場する。とにかく細かいところに鋭い。シャーロック・ホームズのような慧眼もあるが、ワトソンは出てこない。シニカルでもない。

雑誌短編の集合体となっている。初出は2004年ごろであり、後半はここ1年ばかりで急速に書き足された。つまり単行本化に向けて編集者が本腰を入れてくれ、と頼んだのであろう。5年も前からこの決着を作者は最初から見越していたのだろうか。前半と後半で筆致が違うという意見もあったが、それほどとは思わなかった。

今回のテーマは人情物である。東野は徹底的にシナリオが書けるので、どのような線でこの物語を落とし、どこに読者を驚かせるか、感動させるか、というポイントを完全に掴んでいるように見える。それほど巧みであり、涙腺を刺激される。一言にすれば、感動を演出できる。そしてそうとわかっていても、感動してしまう。

トリックとレトリック。この2つの才能を持ったミステリ作家は滅多にいない。いや、通常の作家にも滅多にいない。しかも汎用性のある二重性である。一般の本格ミステリや多くの他ジャンルのように、この文書は世代を選ばない。老若男女、すべてに通用する。文書は平易である。狭くない。誰でも読める。ゆえにベストセラーになる。

1人の中年女性が殺される。しかし物語はそこに焦点がまず当たらない。加賀が懸命に解明するのは、その周辺の小さな齟齬である。そしてそのギャップが解かれても、読者には犯行の謎が解明されたようには見えない。しかし各短編が徐々に徐々に1つの像を結んでいって、ついに最後の謎を解く。いったん犯人は捕まる。しかしその後もある。加賀の推理はいったい誰に向けているのだろうか。

作者は犯罪被害者という世評に敏感である。これは5年前には書けなかった話であろう。ゆえに、テーマを急速に固めていった印象がある。今回は人情物、しかも犯罪の被害を緩和する物語、という具合だ。江戸の情緒を残す人形町を舞台にして、家族の喪失感をうたう。すべては計算尽くだ。

それにも関わらず、そこまでわかっているのに、涙なしには読めない。宮部みゆきや半村良の世界でもある。

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