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2010/08/13 (Fri) 写楽 閉じた国

島田荘司『写楽 閉じた国の幻』新潮社 2010.6 読了。

とにかく分厚い、684頁。それにもかかわらずわずかに2500円。森博嗣も書いていたが、小説って安すぎないか。あまりにも無料のネットに慣れてしまっているので、本当のプロが書いた文章を堪能するのに、その対価が必要なことを忘れてしまうのだ。

写楽本である。作者が20年以上温めてきたアイデアである。まるでデビュー作『占星術殺人事件』を出版してもらう時のように、後先考えず突っ走った結果だそうだ。実際、連載を始めたとき、本書のキモの証明ができるかどうか、まだわからなかったそうだ。それなのに書き始めたのか!! それが最も衝撃的な謎であった。

写楽本である。これまで数多くの学者と芸術家が、写楽の謎に迫ってきた。作者はその謎を3つに分類している。第1に、画法の独自性。あまりに独特で誰からも独立していて、誰にも受け継がれていない。それまでの浮世絵が単なる役者絵の静止画像であるのに対して、写楽の絵は一瞬の動を切り取った度肝である。

第2に、無名の作家がなぜ当代随一の大出版会社・蔦屋重三郎という版元から出せたのか。しかも黒雲母摺りという一流の絵師にしか用いなかった贅沢な背景を持たせているのはなぜか。

第3に、この時代の寵児が売れに売れたという証拠があるにもかかわらず、なぜわずか10ヶ月の活動期間を除けば、ぱたりと消えてしまったのか。そして接触した者の誰もが口をつぐんで写楽の正体を書き残していないのか。

これらが謎である(295頁)。そして作者はこの謎を一気に解決するとてつもない真相を持ってくるのだ。この謎解きには最大級にびっくりした。まさに誰もが考えつかなかった解決策である。

物語は現代編と江戸編に分かれる。現代編は、六本木の回転ドア事件から始まる。これが物語のキモなのだ。この回転ドアはオランダ製であったのだが、日本製に取って変わられた。それが悲劇を生む。子供をこの事故で死なせた主人公が、その贖罪のために、写楽の謎を追求する(詳しくは本文を見てくれ)。この長々としたくだりが、まさに『異邦の騎士』を思わせるような初期の独白になっているのだ。

すなわち徹底的な内省のうえに立った日本国という概念の行く末である。島田荘司は常に、通常のナショナリストとは全く異なる形で、ナショナルな日本国という存在を徹底的に追求する。批判的に追求する。それが写楽の謎を解く鍵なのである。

くどいと感じるかもしれない。しかしいったんこの世界観に慣れてしまえば、一気に読み通せる。東野圭吾のように、手練れの感動を読む文章ではない。しかし圧倒的な切迫感がある。素人的な内省の圧倒感がある。

なぜこの美人東大教授は主人公を助けるのか。こちらの謎は解明されないままに終わった。後書きによれば、様々な謎を残したまま、書ききれなかったそうだ。

証拠となる文書がどのくらい本物のなのか、検証はできない。脚注で典拠を示せば、それなりの推測が成り立つ学術論文になるのかもしれない。

とにかく写楽が好きならば読め。島田荘司が好きならば読め。文体をさほど重視せず、大きな謎を解明したいならば読め。

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