我が輩は坊ちゃんである、名前はまだない、とつぶやいた柿柳です、こんばんは。
柳広司『贋作「坊ちゃん」殺人事件』角川文庫、2010.10 読了。
2001年の作品である。新人賞を取ったので、実際に本屋で箱入りの実物を手に取った覚えがある。しかしどうにもちょっとな、とその時は思って、ずっと忌避していた。なぜかはよくわからない。
その後、この作家が『ジョーカー・ゲーム』という傑作作品を残したので、いくつか読むようになり、その流れで文庫化されている過去の作品も読むようになった。
そして今回の読了である。これは楽しい。もっと前に読むべき本であった。
とにかく漱石の文体そのままである。そして筋もすべて通っている。あの、赤シャツが殺された! いったい犯人は誰なのか。坊っちゃんが図らずも探偵となり、快刀乱麻?の切れ味で真相を明らかにする!
しかし、その真相は明らかにされたくなかったのか。漱石がこの作品を書いたときの社会情勢こそが、真の意味での真相であったのかもしれない。
柳の作品は過去に再評価する。戦時のスパイものなど、特筆すべき歴史解釈と、軽快な文体が渾然一体となっている。まずは読むべき作品であろう。
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