貫井徳郎『空白の叫び』小学館 2006 読了。
2年前以上の作品。古本屋で安く仕入れる。何しろ上下本で3400円もするものだから。貫井の小説はいくつも読んでいるので、その暗さが気に入っている。そこで買ってみた。
それにしても暗い話である。筆致が暗い。世の中の暗さを一身に集めたような暗さである。何しろ3人の14歳の少年がそれぞればらばらに外面上いきなり殺人を犯す、というプロットなのである。物語は3つに分かれる。殺人を犯すまでの生活、少年院の生活、その後の生活、という具合である。2000年以前の少年法を前提にしている。
さてこのような論題では、いままでいくつものパターンがあった。ルポでも小説でも問わずである。つまり被害者を重視する立場から、少年法の保護概念を徹底的に糾弾するやり方。加害者を重視する立場から、それに反論するやり方。
しかし本書はいずれでもない。ただ単に、どうしてこのような少年たちが大きな罪を犯すようになったか、という内面の動きが徹底的に語られているだけなのである。その意味で完璧な小説となっている。なぜ、どのような少年がどのように罪を犯すのか。それだけを追求した小説であった。
もちろんミステリ作家であるから、ある程度の謎は残しておくのだが、問題はその氷解にあるわけではない。ただ単に、殺人への道を描いているだけである。そこには淡々とした、暗澹とした、人間観察があるにすぎない。
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